ダイレクトボンディングによる前歯の審美治療②
ダイレクトボンディング治療による前歯の審美治療の症例
自費のダイレクトボンディング治療によって、矯正治療の際に生じた歯の隙間を改善した症例をご紹介致します。
初診時の口腔内
こちらの患者さまは、矯正治療終了後が終了したので、前歯の隙間を治療してほしいとの主訴で来院されました。
主訴部位を確認すると、左上2、左上3の隣接面には空隙が生じていました。
患者さまにお聞きすると、矯正治療の際に必要なスペースを作るために隣接面を削るディスキング(ストリッピング、IPR(=Interproximal Reduction(隣接歯間の削合))を行った既往歴がありました。
ディスキングに使用する切削器具は複数種類あります。矯正医によっては好みも分かれるようであり、本症例のように直線的に削れてしまうことが多く、スペースを閉じた後、形態不良になるケースも見受けられます。
当院の矯正治療においても、必要な症例ではディスキングを行います。写真のように複数種類の切削器具を使い分け、空隙を閉じた後も審美的・機能的に問題が生じないように細心の注意を払って治療を行います。
ディスキング(ストリッピング、IPR)について記載した当院のブログはこちら>>
ダイレクトボンディングの特徴について
- 強化型プラスチックを歯の表面に直接盛り足す治療法
- 虫歯治療後の詰め物、歯の色や形態、歯並びの乱れなどを改善する場合にも応用可能
メリット
- ダイレクトボンディングは、歯型採りを必要とする治療法よりも歯を削る量を少なくすることが可能
- その日のうちに治療が完了、歯型採りをする必要なし(形態再現が困難な場合は型取りをする必要あり)
- 色調や透明感の再現性に優れているため自然な仕上がり
- 再治療が容易
- 劣化したレジンを削り、新しいレジンを盛り足すことで審美性や機能性を改善可能
デメリット
- 咬み合わせによっては取れやすい
- ダイレクトボンディングは、噛んだときに強く当たる部分には不向き
- 劣化、着色が生じる可能性あり(特に前歯に適応した場合)
- 過剰な負担がかかった場合、脱離の可能性があり
- セラミックの詰め物や被せ物と比較すると、着色、変色や摩耗が起こりやすい
- ダイレクトボンディング治療ではラバーダム防湿を行います。(保険診療では費用と時間の関係から当院では簡易防湿にて対応します)
- 呼気などにより、口腔内は湿度が高く、接着性レジンの物性が最大限に活かせません。
- また、唾液に含まれる細菌、タンパク質、水分の排除を行うことが可能となり、治療の成功率が高まる治療法です。
また、本症例はラバーダム防湿を行うことで達成される「歯肉圧排」の恩恵が最大限に得られる症例でした。
※歯肉圧排・・・歯茎と歯の間に糸を入れて歯肉を一時的に排除する処置。歯茎と歯の境目を明瞭にすることで精密な型取り・処置が可能となります。
④の赤線部位が削合しきれていない部位です。不良補綴物などでよく見られるようなジャンプアップマージンのようになっています。赤線部位を削合して形態を修正し、治療を行う方がダイレクトボンディングが楽かと考えられます。
しかし、本症例は、矯正治療後の経過が短く歯牙に若干の動揺がありました。少しチャレンジングですが、この動揺を利用すれば形態修正を行わずダイレクトボンディングができると考え、治療を行いました。
ダイレクトボンディングの実施
レジンの接着を向上させるためセレクティブエッチングを行います。充填を行わない歯面にとってはダメージとなるため、必要な歯面にのみエッチングを行います。
※エッチング:レジンを接着させる歯面のエナメル質に酸処理を先に行い、レジンの接着力を向上させる処理法。
治療完了
形態の微修正をしてプラークが付着しにくいようにしっかりと研磨を行い、ラバーダムを外して終了です。一時的な歯肉の退縮が認められますが、時間の経過とともに自然と回復するため問題はありません。
年齢/性別 | 30代 女性 |
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治療期間 | 1日 |
治療回数 | 1回 |
治療費 | ダイレクトボンディング 本ケースは1歯16,500円 (費用は16,500円〜33,000円の間で難易度と相談の上、決定いたします。) |
リスクなど | ・経年劣化により脱離、変色する可能性があります。 |