ダイレクトボンディングによる治療症例
つめ物が外れた部分をダイレクトボンディングで治療した症例
つめ物が外れたので治療をしてほしいとの主訴で来院された患者さまです。
口腔内を拝見すると、左上7番の咬合面にセメント充填がされている状態でした。患者さまにお聞きすると、他院にてとりあえず応急処置を行い、金属での修復を勧められたとのことでした。
以前治療を行ってそこまで期間が経ってないような気がすること(おそらく2〜3年前?患者さまもうろ覚えでした)、金属での修復処置しか説明されなかったことに疑問をもち、いろいろとお調べいただき当院を受診されたとのことでした。
レントゲン診査では虫歯はそこまで大きくないことが予想され、治療法の選択肢は幅広く考えられることから、保険での間接法治療(金属修復)、直接法(レジン充填)、自費治療での間接法治療(ゴールド修復、セラミックス修復、ジルコニア修復)、直接法(ダイレクトボンディング治療)についてそれぞれご説明させていただきました。
患者さまのご自身の歯に対する考え方や、ご希望(治療回数、どれくらい長持ちするか、歯質削除量、費用等)等をお伺いし、ベストな選択は何か一緒に考えます。
患者さまのご希望について
- なるべく削りたくない、自分の歯をなるべく残したいことが第一優先
- 自費治療を希望
- 治療回数は複数回かかっても問題なし
術者としては、患者さまの咬合力はそれなりに強そうな歯並びと骨格なこと、最後方臼歯部で咬合力がかかることを考慮すると、”ゴールドによる金属修復”での治療が最適応であると考えられました。しかし、患者さまのご希望を考えると、ダイレクトボンディング治療が適応です。
そこで本症例では、ダイレクトボンディング治療を開始し、セメント充填及び虫歯を取り除いた段階でダイレクトボンディングが可能かを再度診断し、ダイレクトボンディングが適応ではないと判断できた場合は、ゴールド修復に移らせていただくこととしました。
ダイレクトボンディングの特徴について
- 強化型プラスチックを歯の表面に直接盛り足す治療法
- 虫歯治療後の詰め物、歯の色や形態、歯並びの乱れなどを改善する場合にも応用可能
メリット
- ダイレクトボンディングは、歯型採りを必要とする治療法よりも歯を削る量を少なくすることが可能
- その日のうちに治療が完了、歯型採りをする必要なし(形態再現が困難な場合は型取りをする必要あり)
- 色調や透明感の再現性に優れているため自然な仕上がり
- 再治療が容易
- 劣化したレジンを削り、新しいレジンを盛り足すことで審美性や機能性を改善可能
デメリット
- 咬み合わせによっては取れやすい
- ダイレクトボンディングは、噛んだときに強く当たる部分には不向き
- 劣化、着色が生じる可能性あり(特に前歯に適応した場合)
- 過剰な負担がかかった場合、脱離の可能性があり
- セラミックの詰め物や被せ物と比較すると、着色、変色や摩耗が起こりやすい
ラバーダム防湿の実施
ラバーダム防湿は、下記のメリットなどがあり、確立された治療方法です。
・口呼吸による湿度の遮断によりレジンの接着を最大限に引き出せる
・舌、唇、頬粘膜の排除することで治療がしやすくなる
・唾液からの隔離
(唾液中には種々の細菌やコンポジットレジンの接着を阻害するたんぱく質等が含まれますが、これらの治療部位への侵入を防ぎます。そこまで厳密に考えなくても良いかもしれませんが、削り終わって→うがいをして、をしてしまうと、削り終わった部分はむし歯になるリスクが高まると考える歯科医師がいることも事実です。)
う蝕検知液の使用
う蝕検知液を使用します。う蝕の部分だけを染色し、健康な歯質は削らずに治療することが可能となります。う蝕除去を行うと、残存歯質が薄くなっている部位やヒビが入っているところはありませんでした。ダイレクトボンディング治療が可能と判断し、予定通り治療を進めます。
レジンの接着を阻害しない研磨剤(フッ素が含まれていない)にて歯面清掃を行います。
エッチング・ダイレクトボンディングの実施
レジンの接着力を向上させるために、エナメル質部分に酸処理剤を塗布します(セレクティブエッチング)。その後、2液性の前処理剤を塗布したのち、コンポジットレジンを充填していきます。(保険適応のコンポジットレジン充填ではラバーダムは使用しない簡易防湿となります。また、セレクティブエッチングを行わず、1液性の処理剤を使用いたします。)
充填終了後、咬合調整を行い、研磨をして治療終了です。
年齢/性別 | 40代 男性 |
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治療期間 | 1ヵ月(歯周病治療期間を除く) |
治療回数 | 2回(カウセリング1回、治療1回) |
治療費 | 診断料 5,500円(税込) ダイレクトボンディング 本ケースは1歯33,000円(税込) (費用は16,500円〜33,000円の間で難易度と相談の上、決定いたします。) |
リスクなど | ・経年劣化により脱離、変色する可能性があります。 |