メタルボンドブリッジを再治療した症例
メタルボンドブリッジを再治療した症例
他院で治療したかぶせ物が破損したため、メタルボンドブリッジで再治療した症例をご紹介致します。
初診時の口腔内
こちらの患者さまは、他院で治療したかぶせ物が割れたとのことで来院されました。右下6番欠損部に右下7番、右下5番を支台歯としたフルジルコニアブリッジが装着されており、右下6番ポンティック遠心部にて破折している状態でした。
※ポンティック:ブリッジで欠損部にあたる人工歯。
※遠心:歯列の奥側。
レントゲン診査
レントゲン所見です。右下7番、右下5番ともに感染根管治療が行われており、根尖部に病巣等は認められません。右下5番近心部にマージンの不適合が認められます。
診断です。右下7・6・5番は不適合補綴物、破折、右下7・6・5番のクリアランス(かぶせ物治療をするための隙間のこと)の不足。叢生、不正咬合。咬み合わせの歪みが右下に問題を起こしていました。
フルジルコニアとよばれるとても固い材料で治療がされていましたが、ジルコニアは脆性材料の一つです。固くても衝撃に弱いので過度な咬合力が集中する場合は、今回のケースのように破折・破損の原因となります。
※マージン:歯質と修復物・補綴物の境界のこと。
※近心:歯列の真ん中側。
治療計画の立案
治療計画についてです。治療計画の選択肢の提示です。おもに2つが考えられました。
矯正治療後、補綴治療
- 矯正治療により、咬み合わせを根本から治療します。(治療期間 約2年)
- 今回破折しているブリッジの補綴治療を行います。(治療期間 約3〜4ヵ月)
現状のまま補綴治療
- 今回破折しているブリッジの補綴治療を行います。(治療期間 約3〜4ヵ月)
※咬み合わせに問題があることは明白なので、同じように補綴物が破損を繰り返す可能性があります。
患者さまは矯正治療を希望されなかったため、②ですすめていくこととなりました。
さらに治療計画を詰めていきます。
- 右下6番欠損部にはインプラント、ブリッジ、義歯の選択肢が考えられます。
- 患者さまは取り外しをしないものを希望、インプラントは希望しないため、ブリッジでの治療を考えます。
- 審美性を確保しながら、壊れにくさも満たす材料の選択しなければなりません。
- 今回はメタルボンドブリッジを提案させていただきました。貴金属フレームの周りにセラミックを盛り付けた、クラシカルな治療方法です。
- デザインを工夫し、一番負担がかかりやすい最後方臼歯である右下7番は金属で咬合接触を付与し、破折のリスクを減らします。
上記の項目を考慮し、治療計画はメタルオクルーザルデザイン(咬合面を金属で強化した)のメタルボンドブリッジ治療に決定しました。
古いジルコニアブリッジの除去
※巣鴨S歯科矯正歯科ではペンタイプカメラを導入し、治療説明に役立てています。
【左:右下7番 中:右下5番 右:除去したフルジルコニアブリッジ】
まずは、古いフルジルコニアブリッジを除去します。支台歯に虫歯等の所見は認められませんでした。右下5番には分厚いセメントの層が認められました。右下5番の不適合なブリッジ内面部はセメントで満たされ、無理やり装着されていた状態でした。
ブリッジタイプの仮歯を装着
続けてブリッジタイプの仮歯を製作し装着します。咬合調整を行い、安定した咬み合わせをつくりあげます。また、適合の良い仮歯を装着することで、歯肉の状態を整えていきます。
今回の場合、患者さまはしっかりと治療を行いたいとのことでしたので、3ヵ月ほど仮歯で経過観察を行いました。咬み合わせに問題があると、支台歯に負担がかかり痛みが出たり、顎関節の違和感が生じたり、仮歯が壊れたり・外れたりする問題が生じてきます。
3ヵ月問題が生じなかったので、最終補綴へと移行します。
(プラスチックの仮歯で問題が出なかったので、強度のある最終補綴物はよりトラブルのリスクが軽減されると考えられます。)
完成したメタルボンドブリッジを装着
通法に従い、印象採得を行い、メタルボンドブリッジを製作。完成したメタルボンドブリッジを装着した際の写真です。いかがでしょうか、右下7番咬合面及び破折してしまったポンティックの遠心部までメタルを露出させ、強度を確保しています。審美性に劣るかとは思いますが、強度の向上に精一杯配慮をしました。
今回は最終的な補綴物についても、仮着(仮づけ、仮歯に使用するような取り外し可能な強さのセメントで装着すること)にて1ヵ月さらに様子を見ました。
過度な咬合力で補綴物が揺さぶられ、セメントが破壊されたり、適合が悪いと隙間から汚れが侵入してセメントが黒く汚れてきます。
1ヵ月経過しブリッジを外して、セメントの着色、汚染が認められなかったので合着(本づけ、取れないセメントで装着すること)をしました。
治療前後の比較
【治療前】
【治療後】
治療前、治療後の写真です。レントゲンでも適合に問題ないことが確認できました。患者さまには大変満足いただけました。歯科治療で使用する材料は、値段が高いほどより良いというわけではありません。ケースに応じた材料の選択がとても重要です。
今回のケースのように白いかぶせ物に変えた後、トラブルを抱えてる患者さまの相談も増えています。お気軽にご相談ください。
年齢/性別 | 50代 女性 |
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治療期間 | 5ヵ月 |
治療回数 | 10回 |
治療費 | 総額 470,500円(税込) 自費 メタルボンドクラウン 155,000円/歯 自費 仮歯 5,500円/歯 |
リスクなど | ・セラミックスの被せ物に強い衝撃が加わると破損する可能性があります。 ・既根管治療歯に過度な咬合力が加わると歯根破折が生じる可能性があります。 |