フルジルコニアクラウンブリッジの症例②
フルジルコニアクラウンブリッジの症例
保存不可能な歯を抜歯後、フルジルコニアクラウンブリッジで咬み合わせを回復した症例をご紹介します。
初診時の口腔内
こちらの患者さまは、左上2番目の歯が臭うとの主訴で来院されました。
左上2番はセラミックスクラウンによる補綴処置、感染根管治療とメタルコアが装着されていました。レントゲン診査では異常が認められない状況のため、経過観察を行う方針も患者さまと相談しましたが、積極的治療を望まれました。
このような状況の場合、メタルコアを外すと破折線が見つかるケースが数多くあります。破折線の長さ・方向により保存できる場合がありますが、ほとんどの場合は抜歯適応となります。患者さまに説明を行い、治療介入の結果、抜歯を行わなければならない可能性もあることに同意をいただき治療を開始しました。
冠(かぶせ物)、およびメタルコアの除去を行うと、残念ながら歯根破折が認められ、抜歯適応であることが分かりました。後日抜歯と審美性の確保のため仮歯を製作し、抜歯窩の治癒を待ち、最終補綴へと移行しました。
治療方法について
(※参考画像:別症例)
治療方法について患者さまと相談した内容です。
本症例のように中間1歯欠損の場合、義歯、ブリッジ、インプラント治療の選択肢が考えられます。最近ではノンメタルクラスプデンチャーという審美性に優れた義歯(バネが歯肉と同じ色で目立ちにくい)もありますが、患者さまは固定式をご希望のため選択肢から除外しました。
また、両隣在歯の保護(健全歯質の削除量、咬合負担の緩和)の観点から、インプラント治療が第一選択となります。
審美性に優れたオールセラミックスクラウンを製作するためには、健全歯質を約60~70%削合するというデータがあります(Edelhoff, 2002)。 ブリッジですすめる場合は、本症例は支台歯となる歯がどちらも健康な歯(右上3番に小さなCR充填があるのみ)であり、かなりの削除量となります。
患者さまの右上2番、右上1番の審美性の改善もご希望であること、治療期間と費用面を考慮し、補綴物の種類は、メタルセラミックス、ジルコニアセラミックス、フルジルコニアの3つが考えられますが、歯質削除量が減らせ、審美性にも優れるステイニングを施したフルジルコニアでの治療を計画しました。
各治療法のメリット・デメリット
▼義歯・ブリッジ・インプラントのメリット・デメリットは下記の通りです。
名称 | メリット | デメリット |
---|---|---|
義歯 | ・土台の歯を削る量が少ない ・着脱可能なため清掃性が高い ・破損したら修理や再製作が容易 |
・取り外しが不便 ・食事中に外れてしまう場合がある ・食渣がたまり、歯周病になりやすい ・デザインによっては審美性が悪い |
ブリッジ | ・固定式のため自分の歯と同じように使用可能 ・審美性が高い |
・土台の歯を削る量が多い ・破損したら再製作が必要な場合あり ・セルフケアが困難 |
インプラント | ・固定式のため自分の歯と同じように使用可能 ・審美性が高い ・両隣の歯を削らなくて済む |
・パーツが破損した場合は修理が必要 ・歯槽骨への介入が必要 ・費用が高い |
支台歯形成・仮歯の製作
(※参考画像:別症例)
治療計画が決定したので、治療を進めていきます。
表面麻酔を十分に塗布・留置した後に浸潤麻酔を行い、支台歯形成を行います。
シリコンコアを用いて補綴物に必要最小限の歯質削除が達成できているか確認を行います。
精密印象(最終的かぶせ物の型取り)
プロビジョナルクラウンを製作し、知覚過敏等の症状が出ないか、プロビジョナルクラウンの形態で審美面だけでなく機能面(咀嚼、発音等)に問題がないかを確認しながら3ヵ月経過観察を行いました。問題がないことを確認し、シリコン印象剤を用いた精密印象を行いました。
完成した補綴物
シェードテイキング(歯の色合わせ)を行い、完成したフルジルコニアブリッジです。グラデーションにステイニング(着色)が施され審美性に優れた補綴物です
フルジルコニアブリッジの試適・装着
口腔内に実際に装着して、審美面だけでなく機能面(咬合関係、咀嚼、発音等)に問題がないことを確認し、患者さまの了承を得て合着(外れないようにセメントで装着すること)を行い治療終了としました。
治療終了
術後の写真です。咬み合わせが深く(過蓋咬合)上顎前歯部に負担がかかりやすい条件のため、今後も注意して咬み合わせの管理を行なっていく予定です。
年齢/性別 | 60代 女性 |
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治療期間 | 4ヵ月 |
治療回数 | 6回 |
治療費 | 自費 仮歯 5,500円(税込)/歯(本症例では5歯分) 自費 精密印象採得 8,800円(税込)/歯(本症例では支台歯5歯分) 自費 フルジルコニアクラウン(ステイニングあり) 141,000円(税込)/歯(本症例では5歯分) |
リスクなど | ・被せものに強い衝撃が加わると破損する可能性があります。 ・知覚過敏や疼痛を生じる可能性があります。 |